【高尿酸血症/痛風への予防医学的対処法2023】

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

【尿酸ってなんなの?】
「尿酸」と聞くとドキッとする方もいらっしゃるかと思います。尿に含まれる「尿素」と言う物質をご存知の方も居るかも知れません。どちらも、体内で窒素を含む蛋白質の構成成分であるアミノ酸や、核酸を体内で代謝する過程で作られる物質です。

哺乳類以外ではアミノ酸由来であれ核酸由来であれ窒素代謝経路は独立していませんが、哺乳類はアミノ酸由来と核酸由来の代謝が独立した別の経路であり、アミノ酸由来の窒素を尿素として、核酸由来の窒素を尿酸を経由してアラントインという形で排泄しています。

ところが人間と一部の類人猿、その他の極一部の哺乳類は、尿酸をアラントインに変換する酵素を突然変異で喪っており、尿酸がたまる傾向があります。そして水溶性の低い尿酸が血液中に異常に増えると結晶化して「痛風」と言う激痛を伴う炎症を引き起こす原因になってしまいます。

【尿酸は単なる排泄物なのか】
人間の体内では毎日約0.7gの尿酸が作られると言われています。この産生が多くなったり排泄が低下すると尿酸は体内に蓄積し、なんらかのきっかけで痛風発作を起こします。要するに、尿酸はプリン体の代謝産物、つまり廃棄物であり、プリン体処理がうまくいかないと痛風になる。尿酸自体に役割(生理活性)は無い。と言うのが従来の常識でした。
元々膀胱結石から発見されたと言う経緯から腎臓からの排泄が注目されますが、実は体内で産生された尿酸の2/3程度は腎臓から1/3程度は消化管などの腎外経路から排泄されることが分かっています。さらに驚くのが腎臓の尿細管で尿酸は約90%も再吸収されていると言う事実です。

【尿酸の生理的意義とは】
ただのゴミをエネルギーを使い再吸収するほど人間は愚かなのでしょうか?そんなことは無いことが分かりつつあります。

痛風の患者さんはアルツハイマー型認知症になりにくい (Lu N et al.: Ann. Rheum Dis 75(3), 547-551, 2016)と言う報告が出てから、その他のパーキンソン病、多発性硬化症、側索硬化症などの神経変性疾患においても、尿酸値が高いことが発症抑制あるいは進行抑制の効果がある可能性が指摘されています。

これらの病気の原因には、活性酸素の影響があるとされており、実は尿酸には強力な抗酸化作用がある、と言うことが分かってきました。

正確に言うと、・適正濃度下では抗酸化作用・高濃度条件下では酸化作用を示します。

体内の臓器によって尿酸濃度が異なる為に、部位によって酸化作用、抗酸化作用のどちらが働くかは異なります。

細菌感染などによって細胞が破壊された際に尿酸が放出されることにより、免疫系の樹状細胞を刺激し自然免疫を活性化させる、と言う機能があることも分かってきました。

尿酸の他に有名な天然の抗酸化物質としてビタミンCがあります。多くの動物はビタミンCを体内合成できますが、進化の過程で人間は合成能力を失いました。植物食では体外からビタミンCが十分に摂れる為に合成しなくても困らなくなったから、と言う研究者もいますが、いずれにせよその代替として尿酸が使われているのでは無いか、と考える研究者もいます。

【尿酸値は高くても良いのか】
この様に素晴らしい機能が分かってきた尿酸ではありますが、高濃度になってしまうと酸化作用が強くなるだけで無く、体内で結晶を形成してしまい、関節痛や皮下結節、尿路結石などを引き起こしてしまいます。特に尿が酸性に傾くことで結晶化しやすくなります。

ですから、生活習慣の改善や薬により尿酸濃度を下げることが行われます。
「プリン体を多く含む食事を避ける」と言う指導も長年行われてきましたが、避けているのに痛風発作が起きる事例も多く、著効しないことも知られていました。

そもそも血液中の尿酸の70-80%は、「不要になった細胞の分解」や「エネルギー代謝」の結果として出来るものですので、痛風発作予防や尿酸値の正常化を期待して、食事に含まれるプリン体だけを減らすのは、あまり有用では無いと言う指摘もあります。

痛風発作後の人がまた発作が起きない様に、プリン体を多く含む食事を避けるのは心理的にも医学的にも無駄とは言えませんけどね。

【尿酸値が高くなる原因とは】
なぜ血液中の尿酸値が高くなるのでしょうか。これまでの医療の常識では、「生成過剰」か「排泄量減少」により尿酸値が高くなることは言われていましたが、なぜ「生成過剰」や「排泄量減少」が起こるのかまでは説明できていませんでした。ですから、血中に含まれる尿酸の2-3割の由来とされる、食事由来プリン体を減らすくらいしか、解決策が無かったと言えます。

尿酸の大きな機能は、強力な抗酸化作用(適正濃度下において)ですよね。
と言うことは高尿酸血症とは、細胞レベルの慢性炎症や過剰な活性酸素に対処する為の、身体の防衛反応とも言うことが出来ます。

古代の地球上において酸素は猛毒で、生命体は酸素を使っていませんでしたが、ミトコンドリアを取り込み酸素をうまく使えた生命体のみが生き残り、現在に至っています。

そして酸素を使う様になった代償として、活性酸素の害に悩むことになるのですが、SOD(Super Oxide Dismutase 活性酸素不均化酵素)と言う強力な抗酸化作用を有する酵素を作り出すことで対応したのです。

しかしそれだけでは処理しきれない状況になり、その対応策のひとつとして、尿酸値を上げると言う反応があると言う仮説です。

もしそうなのであれば、薬剤で強制的に尿酸値を下げることは、活性酸素の害をそのままにしてしまうので良くないと言えますが、学会も医師も痛風発作への対処だけ考え、抗酸化作用については敢えて見ない様にしています。

【尿酸値を下げるのに必要なこと】
痛風発作が起きてしまっている場合は、医療施設における対症療法が有効ですが、尿酸値を下げる薬を飲み続けることは、アクセルを踏み続けながらブレーキを踏む様なことで、根本原因を無視したやり方でもありますし、むしろ抗酸化力を抑えてしまう害も起こり得ます。

現代社会の大きな問題である「糖質過剰」に伴う内臓脂肪蓄積による、腎臓機能障害が様々な病気の原因になっていると言う説もあります。
塩分の排泄機能障害により高血圧が、尿酸の排泄機能障害により高尿酸血症が起きやすくなると言うものです。

発汗や活動量に応じて調節する必要はありますが、水分を1日1.5-2L、意識的に飲んで排尿を我慢せずに行うことや、ナトリウム排泄に有用なカリウムを含む野菜や果物の摂取、血管や筋肉の緊張を和らげたりエネルギー産生に重要なマグネシウムなどの意識的な摂取が有効です。

お茶やコーヒーは利尿作用のあるカフェインが含まれるために水分補給にはならないと言う意見もありますが、1日3-4杯程度であれば問題ないと言う報告もありますので、水だけでなくお茶やコーヒーを適宜飲むのも良いと言えます。

アルコールに関してはアルコール分解の際に水やビタミンを消耗するので、飲んだ量と同じ量の水をこまめに補給する様にしましょう。

高い尿酸値と相関する要素として、肥満、インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症などが言われていますが、コレらに共通するのは「慢性炎症」です。

であれば、慢性炎症や活性酸素への対応をすると言うことが本来やるべき対策になります。

抗酸化作用のある・ビタミンA・ビタミンC・ビタミンE・CoQ10(コエンザイムQ10)などに加え、抗酸化物質を還元化し再活性化させるαリポ酸や、色の濃い植物に含まれる色素性成分「ファイトケミカル」なども積極的に摂取して身体をサポートすることがとても大切になります。

ファイトケミカルと言うのは、健康に有用な植物に含まれる色素成分の総称で、βカロテン、リコピン、カテキン、アントシアニン、レスベラトロールなどが有名です。

これらは抗酸化物質としても有用ですが、継続して摂取することで体内でのSOD産生を活性化させる働きがあることも分かっています。

また植物を意識して食べることで、尿がアルカリ性に傾きやすくなり、尿酸の結晶化を抑えたり、結晶化した尿酸を溶かしたりする効果も期待できます。

肥満対策としてダイエットがありますが、
低カロリーの少食を常にするだけですと、身体は代謝を落としたり食欲増進ホルモンを増やして抵抗します。

インスリン抵抗性がある状態ではインスリンの基礎分泌量が高くなり、インスリン分泌を刺激する物を摂ると、通常より遥かに多いインスリンが分泌され、血管内皮を傷害します。ですから低カロリーや低GI(GL)でもこまめに摂取してしまえば、インスリン抵抗性は改善しません。インスリン抵抗性は、・多量のインスリンが・継続して分泌されることで引き起こされるので、「インスリンが分泌されない時間」を意識的に作ることで、徐々に緩和していくことが出来ます。

またインスリン抵抗性は、・肝臓・筋肉・脳などの部分に個別に発生し、お互いに影響し合わないことも知られています。食べ物によるインスリン抵抗性は肝臓で起こり、運動不足に伴うインスリン抵抗性は筋肉で起こる、と言う感じの様です。コレらが持続することで、脳の方にも影響を与えてしまい、脳の体重設定値が高くなる可能性があります。
完全に固形物オフとなると身体機能はむしろ活性化するとも言われますし、インスリン抵抗性の改善には、定期的に食べない時間を設けるのが有用と言う報告もあります。

1日のうちで食事をすると決めた時間帯以外はインスリン分泌を強く刺激する様な物の飲食を避ける、と言うやり方です。

まずは睡眠時間前後の3-4時間以内は水以外は口にしないのが良いです。それに慣れてきたら、少しずつ食べない時間を長くしていき、12-16時間は水分だけで過ごすのが理想です。

16時間以上食べない時間を続けることで、細胞内の老廃物や機能が低下した蛋白質を積極的に分解し再利用するオートファジーと言う機能が活性化し、ミトコンドリアの活性化、アンチエイジング、などの効果がある事も報告されていますので、可能なら16時間の断食に挑戦してみて下さい。

水だけだとキツイ場合には、まずは食事に含まれる糖質(デンプンと甘いもの)を半分に減らすことから始めて頂くと、体が糖質依存から離脱してくるので、断食時のツラさが和らぎます。

また空腹感や倦怠感が出てしまうと言う方の場合は、直接血糖値の上昇に関係する糖類、デンプン、胃からのインクレチン(インスリン分泌を刺激するホルモン群)分泌を強く刺激する固形物を避け、ミネラル分とアミノ酸が含まれるボーンブロスや具なしの出汁スープなどは許容するとか、プロテインドリンクは許容する、などのやり方もあります。中性脂肪を分解しエネルギーとして使う経路を活性化する、中鎖飽和脂肪酸(MCT)オイルをスープやドリンクなどに加えても良いですね。

毎日行うのは無理と言う方は、週に1-2日24時間水分以外食べないと言うやり方も有効です。やる場合は2日連続しない様にして下さい。

また最近では総消費カロリーは、食事や運動に関係なく中長期的には一定である、と言う報告もされています。先進国の高度肥満の人でも、狩猟採集を行い痩せている人でも、総消費カロリーは個人差以上の違いは無いと言うものです。

何故なのかは未解明なのですが、食事のカロリー計算や運動のカロリー計算は、誤差が多くあまり意味が無いので、飲食した物の記録と翌日以降の体重の変化を比較して、増えていたら食べ過ぎ、減っていたら少ない、と言う様な評価が、生理学者から推奨されています。

食事量を抑え適度な運動を行う事で、慢性炎症など余計な代謝を抑える効果が期待されますが、過度な食事制限や過度な運動は、不足エネルギーを補うために食欲が亢進するとともに、中長期的に基礎代謝を下げてしまったり、ストレスでむしろ活性酸素を増やしてしまうことが報告されていますので、逆効果になるので気をつけましょう。

まとめると高尿酸血症や痛風でお悩みの方は、

・ナトリウム以外のカリウムやマグネシウムなどのミネラル分を意識して摂る
・抗酸化物質を意識して摂る(色の濃い植物を中心にした食事、身体のSOD不足をサポート、サプリメントも活用)
・精製糖質、特に果糖を減らす(糖化源・活性酸素源を減らす、内臓脂肪を減らす、急性期治療の為には完全に断つ意識)
・適度な運動と十分かつ良質な蛋白質、脂質を摂る(内臓脂肪を減らす)
と言うことが大切です。

是非できることから始めてみて下さいね。

健康改善や病気予防に興味があるけど、何を学べば良いのか分からない方は、一般社団法人Wellness Life Support( https://wellnesslifesupport.or.jp )の上級会員となってみて下さい。初級会員でも会員サイトで学べますが、安価な設定にさせて頂いた為、ウェビナー参加や直接のやり取りが無いですので、まずは学びたいと言う方向けです。