「トランス脂肪酸の真実」
2012年の記事ですが、
食品安全委員会の報告書に基づく
分かりやすいので御紹介します。
また長くなってしまいました。
もともと、脂肪が悪と言われる
様になったのは、
虚血性心疾患が死因第1位だった米国で、
1950年代のAncel Keys博士による、
7か国を対象とした食事内容と心疾患の
因果関係を調べた研究の結論
「飽和脂肪酸が心疾患の原因」
等をもとに、1977年に示された
マクガバンレポートで食事目標が
設定されたことに始まります。
その際に飽和脂肪酸が悪とされ、
植物油に水素付加をして固形化した
マーガリンやショートニングが
健康的、と宣伝されました。
そして、40年間あまりにわたる
米国の脂肪制限実験の結果は
・2型糖尿病の有病率は1982年から2012年の間に166%増加。
・国民の3分の1以上が肥満状態
と惨憺たるもので、大失敗。
その後、脂肪と心疾患に
因果関係がないとする疫学的研究が
多数報告、40年以上にわたり
最も批判されてきた脂肪は
健康を害するものでないとされ、
日本動脈硬化学会も
「食事で体内のコレステロール値は変わらない」
との声明を発表しています。
その一方で飽和脂肪酸の代替品として
作られたマーガリンやショートニングに
多く含まれる人工トランス脂肪酸が
LDLコレステロールを増やし
HDLコレステロールを減らして、
冠動脈疾患のリスクを
上げると指摘される様になりました。
食事で体内のコレステロール値は
変わらないのに、変ですが。
人工的な不自然な脂肪が
細胞膜の材料となった場合に
細胞機能が正常に働かない、
と言う方もいます。
欧米では冠動脈疾患の患者が多く、
2003年世界保健機関(WHO)は
「トランス脂肪酸量は
総エネルギー摂取量の
1%未満とすべき」と勧告。
一方国内では無規制の為、
「欧米では規制されてるのに、
日本では全く規制されないのは、
企業の圧力に国が屈しているのだ」
と言われる様になりました。
そこで、政府や生産者と
利害関係の無い第三者機関と
しての食品安全委員会が
2010年から調査研究を行い、
2012年3月報告書が完成。
2003-2007年度の
日本人のトランス脂肪酸の
エネルギー比摂取量は
平均:男性で0.30%、女性で0.33%。
摂取量の多い上位5%の人達でも
男性で0.70%、女性で0.75%。
WHOの目標値である
1%を下回っているため、
食品安全委員会は
「日本人の大多数が
WHO の勧告基準である
エネルギー 比 1%未満であり、
また、健康への影響を
評価できるレベルを
下回っていることから、
通常の食生活では
健康への影響は小さいと
考えられる」と
結論づけました。
ところが、同時に
トランス脂肪酸の低減努力が、
飽和脂肪酸の摂取量増加に
つながっている恐れが
示されました。
食品安全委員会は
マーガリンやショートニングなど
個別の市販品に含まれる
トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の量を
2006年度と2010年度に調査。
トランス脂肪酸の含有量は、
一般用も業務用も
大きく低減されていましたが、
代わりに飽和脂肪酸の含有量が
増えていました。
飽和脂肪酸は、
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」での
目標量は18 歳以上で
エネルギー比 4.5~7.0%となっています。
従来型の糖質重視の栄養学
基準ではありますが。
しかし、
2003-2007年のデータによると、
女性の20~39歳の半数以上が
7.3-7.4%と上限値を上回っています。
製品調査で、
飽和脂肪酸が急増している、
という結果を考え合わせると、
飽和脂肪酸の実際の摂取量は
さらに増加している可能性があります。
飽和脂肪酸の代替品に含まれる
トランス脂肪酸を避けることで
飽和脂肪酸が増えていると言う
なんだか不思議なことに。
しかも、トランス脂肪酸ゼロの
マーガリンやショートニングの
材料として多く使われるパーム油
も、元々食用では無かったものを
精製して食用にしていますが、
安全性の問題も指摘されており、
注意が必要です。
原材料表示では「植物油」と
なっていますので分かりにくい
のも問題です。
トランス脂肪酸への意識も
大切ですが、飽和脂肪酸過剰も
注意する必要があります。
そして、ω3不飽和脂肪酸を
意識して摂るようにしましょう。
科学無視のトランス脂肪酸批判 思わぬ弊害が表面化
「狂った油」、などと言われ、話題となったトランス脂肪酸。この度そのリスク評価が出たが、飽和脂肪酸との意外な関係がわかってきた。
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