【水道水と塩素のお話-2023夏-】
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
本日は水道水と塩素について、かなりまとまったことを書いてみました。
お時間とご興味のある方は、ぜひ読んでみて下さい。
微生物や感染症と言う概念が生まれるまでは、山林に降った水が地層で自然に濾過されて出来た、小川や井戸の水をそのまま飲んだり煮炊きに使ってました。今でも途上国などにおいては、生きていくために濁った臭い水を飲まざるを得ない人もいますし、浄水されていない井戸水を使っている人もいます。
感染症の知見や衛生知識の進歩とともに、見た目が例え綺麗だとしても、地域ごとにある浄水場で河川や湖沼などからの原水を浄水した水道水が各家庭に配水される様になりました。
日本の水道水は厳格な基準をクリアし、送水前に次亜塩素酸ナトリウムを添加して水道の蛇口から出る時に0.1mg/L以上の遊離残留塩素があることが求められています。
飲んで美味しいと感じるのは、0.5mg/Lくらいまでの様で、一部地域では自主的に上限をその辺りにしていたりします。
詳しく知りたい方は、かなり昔の2017年に書いたブログ記事ですが、参考にして頂けると幸いです。
https://www.miyazakikohji.com/tap-water-is-poison/
国際的には世界保健機関(WHO)の飲料水ガイドラインで、健康に影響がない残留塩素の濃度を「5mg/L以下」としています。
ちなみに1mg/L以上の濃度では殺菌効果があまり変わらないと言う報告もあるので、実際には濃度が高くても1.0mg/L前後であることが多いです。
水道水で鼻うがいをして、「脳喰いアメーバ」と呼ばれるフォーラーネグリアと言うアメーバに感染して亡くなったと言うニュースが、アメリカでありました。
このアメーバ自体は温帯地域の水にはどこにも居るありふれたアメーバで、日本でも感染例が1例ありますが、感染経路は水道では無いようです。
米国での報告例の場合、管理の悪い貯水槽のある集合住宅であったり、そもそも飲用を前提としてない様な衛生環境がそれほど良くない水道の地域で起きたことですので、水道水全部が危険とも言えないですね。
世界でも稀な、飲める水道水のある国に住んでいる日本人の多くは、水メーカーのマーケティングにより、水道水より検査項目数が少なく基準も低い、ミネラルウォーターやボトル入りの水をお金を出して買う様になりましたが、とても勿体無いことです。
少なくとも公的機関が飲用出来ると保証してある水道であれば、原水に適切な消毒や殺菌処置がされていますので、水道水に塩を入れ生理食塩水を作って鼻うがいをしても感染リスクは低いと言えます。
そう言う確認が出来ない地域の場合や、井戸水や川の水を使う場合には、濾過や煮沸をして冷ました物を使う方が良いです。コレは飲む場合にも同じことが言えますけどね。
鼻うがいや慢性上咽頭炎については、今年4月に書いた記事を参考にして下さい。
https://www.miyazakikohji.com/about_chronic_epipharyngitis/
水道水を安全に配水する為に必要不可欠な次亜塩素酸を用いた塩素消毒ですが、水道水中の塩素は、皮膚、粘膜、体液、毛髪などの有機物と速やかに反応し消えてしまいます。
水道水を飲む際には、唇や口内粘膜と反応し消失してしまいます。食道や胃に到達する頃には、塩素イオンが少しあるだけです。元々胃液には塩酸が含まれてますので、害は無いです。
水道水中の遊離残留塩素は、入浴の際にも皮膚や毛髪と反応し酸化させ傷めます。健康な肌や粘膜であれば、ほとんど影響は無いのですが、
元々アトピー性皮膚炎などの場合、ただでさえ乾燥しやすい皮膚が更に乾燥しやすくかったり、ピリピリした刺激を感じたりしますし、呼吸器粘膜を刺激し喘息を悪化させると言う報告もあります。
洗髪後の髪のキシミなどが気になる方は、塩素が原因かも知れません。
またシャワーやお風呂の様な40℃前後の場合、残留塩素が気化して、経皮や経粘膜で吸収されることから、残留塩素の害を検討する必要がある、と言うことも1980年頃に米国で指摘されています。
家庭での入浴の際には、抗酸化剤としてアスコルビン酸(ビタミンC)を入れたり重曹(入浴剤でも可)を入れると中和されますが、実は指を入れてかき混ぜるだけでも、残留塩素は反応して消えてしまいます。
Facebookのリール動画にそれを示す実験映像がありましたので、見てみて下さい。
見られなくなってたらスンマセン。
https://www.facebook.com/reel/1389528298293162?fs=e&s=TIeQ9V
不特定多数が利用する、スイミングプールや循環型の公衆浴場の場合には、衛生管理の為に、0.4-1.0mg/Lの遊離残留塩素が求められるので、家庭よりも塩素による酸化作用は強くなります。利用後の保湿や酸化対策ケアがより大切と言うことですね。
カルキ臭が気になる方や皮膚の弱い方などは、オゾン殺菌や紫外線殺菌を使っているプール、換気の良い浴場を使う様にするとか、残留塩素規定のない源泉掛け流しの天然温泉を使う様にすると良いです。
とは言えオゾン処理も紫外線照射も、単独ではなく循環ろ過装置と併用して用いるもので、消毒効果の残留性、持続性は期待できませんので、衛生管理規定範囲内の塩素剤の利用は必要です。カルキ臭などはかなり軽減されますが、遊離残留塩素ゼロと言うわけではありませんのでご注意下さい。
ちなみに水道水やプール、公衆浴場などで気になる「カルキ臭」ですが、次亜塩素酸ナトリウムに含まれる塩素が、原水のアンモニア性窒素と反応して出来た「クロラミン」がカルキ臭の正体と言われています。
お湯に含まれる塩素が揮発する様に、水道水を沸騰させることで塩素はより早く揮発します。その水を冷蔵庫で冷やせば、カルキ臭を気にせずにおいしく飲むことができます。
塩素が反応して出来たトリハロメタンを除去する意味でも、ポットやヤカンの蓋を開けて、10-30分沸騰させると良いです。電気ケトルの場合には蓋を開けて沸騰させると良いですが、自動で切れてしまう場合は数回沸騰操作を繰り返しましょう。
口の広い容器や大きな鍋に、水道水を汲み置きしておくことでも塩素を飛ばせますが、時間がかかります。水道水を入れた容器を太陽光が当たる場所に置いておきます。 夏場であれば15リットルで1-2時間、曇り空の日は1-2日、冬場の場合は1週間ほど時間が必要になることがあります。 カルキが抜けた水は生物にも恰好の環境になりますので、放置し過ぎると衛生的に飲用出来なくなりますので、ご注意下さい。
上記の家庭での入浴時のアドバイスの様に、抗酸化剤を入れることで塩素を中和することも出来ます。安価で手に入りやすいのはアスコルビン酸(ビタミンC)ですが、飲む場合には水差しやコップに輪切りのレモンなどを入れるだけでも効果的です。色の濃い野菜や果物、お茶やコーヒーにも抗酸化物質が含まれますので、野菜クズやお茶やコーヒーの出し殻を使った塩素の中和も出来るはずです。
備長炭や活性炭を使って残留塩素を吸着させることも出来ます。浄水器の原理ですね。活性炭フィルターを通す際には、適切な流量が大切です。蛇口装着型浄水器の場合、かなり弱く出さないと、ただ通り抜けるだけで十分に濾過が出来ませんし、フィルターが小型なのですぐに飽和してしまいます。飽和したフィルターを使い続けると、それまでに吸着した物質を放出する様になるので、むしろ使わない方が良い、と言うことにもなります。利用される際にはご注意下さい。
また十分な性能と量の活性炭フィルターで濾過をすることで、遊離残留塩素以外の、送水中に混入した予期しない重金属などの不純物も、取り除くことが出来ますので、浄水器を探すときには、良質な活性炭をどれだけ使っているかを意識して見てみましょう。
半透膜を活用した逆浸透(RO)膜を用いた浄水器を使えば、ほぼ純水を作り出すことが可能です。ただ汚濁度に応じた圧力をかける必要があることと、必要なミネラル分まで除去されてしまいますので、地域の水に何らかの汚染が考えられる様な地域で、活性炭では取り除けない様な汚染がある場合には、利用を検討してみても良いと思います。
正しく水道水と塩素のことを知れば、適切な水道水の利用も出来ますし、より体に負担をかけない様な入浴もできます。
出来ることから始めていきましょう!
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