【金属アレルギーについて】

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

とある知人がここ数年来苦しんでる
金属アレルギーが一気に悪化した、
と言うことを聞きまして、
食事改善法をお伝えさせて頂きましたが、
この食材選びが結構大変なんですよね。

そもそも金属アレルギーとはなんでしょう。
特定の金属に触れたり、
その金属を含む食べ物を食べることで起こる
アレルギー症状の総称です。

金属アレルギーには
「直接触れた部分の皮膚に炎症が起こるタイプ」と、
「全身に症状が出るタイプ」
があります。
基本的には原因金属を避けることによって、
ある程度症状をコントロールできますが、
金属アレルギーの症状は
時間が経過してから現れることもあるので、
原因となる金属を自分で特定することは
かなり困難で確定診断には
医療機関での検査が必要になる事が多いです。

そもそもアレルギー反応は
「感作(かんさ)」と「誘発(ゆうはつ)」の
2つのプロセスで起こるとされています。

金属は汗に触れると陽イオン化し、
体内に入り込みます。
イオン化した金属は、
身体の中の蛋白質と結合して
「金属蛋白質複合体」となり、
免疫細胞により異物と記憶され、
次に侵入してきた時の為に
迅速に対応出来る様に備えます。

この反応を「感作」と呼び、
感作を起こした物質を
「感作物質」と呼びます。

感作物質が再び入ってくると、
免疫細胞や抗体などによる
強い免疫反応が起こり、
様々なアレルギー症状を引き起こします。
たとえ微量でも
強いアレルギー反応が起きることがあります。

金属アレルギーは他のアレルギーと同様
全ての人がなるわけではなく、
触れる金属の種類とその人の体質などの
条件によって発症すると言われます。

最先端の予防医学研究においては、
腸内環境の乱れや小腸粘膜の慢性炎症により
本来は血管内に入るべきでは無い様な
微生物やその断片、蛋白質などが
血流内に入って全身を巡ることで、
様々な物質を「感作」してしまい、
体中で異常な免疫反応を引き起こし、
様々な不調や病気の一因となっている、
と言う事が提唱されています。

「リーキーガット(腸管壁浸漏(ちょうかんへきしんろう))」
と呼ばれる疾患概念で、
まだ正式に認められた病名では無く、
ひとつの病態仮説に過ぎないのですが、
この病態の存在を前提とした
食事などの生活改善をする事で、
現代医療で原因不明、難治性とされる
自己免疫性疾患やアレルギー疾患の
患者さんの中に症状が改善する人達が
いる事も事実なんですよね。

金属装飾品を身につける機会が多かったり、
金属をつけたまま運動したり汗をかくことが
多かったりすると発症しやすくなります。

汗に溶けやすい金属ほど
体内に取り込まれやすく、
特にニッケル、コバルト、クロムは
三大アレルギー金属とも呼ばれ、
汗に含まれる塩素イオンに反応して
イオン化しやすく、
金属アレルギーを引き起こしやすい物質です。

ニッケルは、
イヤリング、ネックレスなどのアクセサリー、
ベルトのバックル、ニッケルメッキ、硬貨、
塗料などに使われます。

コバルトは、
メッキ、塗料、硬貨、青色系染料、
顔料、化粧品、セメント、乾燥材
などに使われます。

クロムは、
メッキ、インク、塗料、革製品のなめし剤
などに使われます。

歯科で使われる歯列矯正用の装置、
虫歯治療後の詰め物、
顎骨に固定するインプラント義歯
などに含まれる金属もアレルギーの原因となり、
水銀、ニッケル、スズ、コバルト、クロム、
パラジウム、白金、銅、亜鉛、金などによる
アレルギーが知られています。

純度の高いチタン、ジルコニウム、
サージカルステンレス、白金(プラチナ)は
イオン化しにくいため
アレルギーを起こしにくいとされます。

ただこれらの金属を加工する際は
他の金属と混ぜた「合金」として
使用することが多いため、
混ぜ合わされた金属で
アレルギーが起こることがありますし、
整形外科などで使われる骨接合金属や
循環器内科で使われる血管内ステントなどの
安全性が高いとされる医療用金属でさえも
アレルギーを引き起こすことがあります。

金属アレルギーの症状には、
金属が直接触れた皮膚だけ
炎症を起こす局所タイプと、
金属が食品や歯科材料を介して体内に入り、
全身に皮疹が出る全身タイプがあります。

局所タイプは、
触れた部位に一致した皮膚に
赤みやかゆみ、水疱(水ぶくれ)などの
症状が現れます。
医学的には「接触性皮膚炎」と呼び、
局所タイプの金属アレルギーも
接触性皮膚炎のひとつとされます。

金属は汗や体液に触れ溶け出すため、
汗をかく状況や、ピアスホールなど
金属が体液に触れる状況で
アレルギーを発症しやすくなります。

全身症状タイプは、
一度感作された原因金属を
体内へ吸収することでアレルギー反応が起き、
身体の広範囲に皮膚症状を引き起こします。

医学的には局所タイプと区別するために
「全身性接触性皮膚炎」と呼びます。

歯科材料金属に対するアレルギー反応として
口の中がただれたり全身に皮膚炎が起きたり、
足の裏や手のひらに水疱(水ぶくれ)や
膿疱(白い膿の入った水ぶくれ)が
できることがあります。

金属アレルギーの診断は
主にパッチテスト(金属をしみこませた
フィルムを皮膚に貼って
アレルギーの有無を判定するテスト)
の検査結果をもとに医師が行います。

特定の金属で一度感作されてしまうと、
アレルギーが無くなることは無い
とされますが、
原因金属がわかっているときは、
それらに触れたり口から取り込むことを
避けることによって、
ある程度症状をコントロールできます。

アレルギー反応が酷い時には、
ステロイド外用剤などで炎症を抑えることで
症状を抑えられますが、
皮膚症状以外に、
息苦しさ、めまい、吐き気などの
症状が現れた場合は、
アナフィラキシーと言う
強いアレルギー反応が起きており、
最悪呼吸停止や心停止に至る可能性がある為、
すぐに医療機関を受診する必要があります。

金属アレルギーは他のアレルギーと同様に
誰にでも発症する可能性がありますので、
金属アレルギーを引き起こしやすい金属に
むやみに触れないように心がけましょう。

眼鏡や時計など、
肌につけて使用する日用品やアクセサリーは、
イオン化しやすいメッキ製品は避け、
純度の高いプラチナや金、チタン製や
ニッケルフリーのものを選ぶと
比較的安全です。

特に夏場や運動時など、
汗をかきやすい状況で金属製品を
身につけないようにすることも大切です。

金属が体液に触れやすいピアスは、
金属アレルギーを引き起こしやすいので、
ピアスホールが安定するまでは、
チタン製あるいは金属以外の
シリコン素材等のものを使用したり、
汗をかく時には外したりするなどの
意識が大切です。

加えて多くの現代人の腸粘膜は、
リーキーガットの状態とも言われます。
改善させる為には食生活改善が
唯一の根本的解決方法です。

・精製糖質(甘味料、デンプン)を摂り過ぎない
・小麦(グルテン)、乳製品(カゼイン)を摂らない
・抗酸化力/抗炎症力の強い栄養素を含む食材を意識的に食べる
・食物繊維や発酵食品を意識的に食べる
・食べない時間を定期的に作る

などが効果的と言われています。
腸内環境を意識した食事をする事で、
アレルギーが起きる過程の
「感作」や「誘発」を起こりにくく
する事が期待されますので、
アレルギー体質の方は
上記の食事改善は行うことで
症状の改善が期待できます。

もし金属アレルギーになってしまった場合は、
原因金属を避けることが
一番の発症予防になりますので、
身の回りの金属製品や微量の金属を含む食品に
注意を払って生活しましょう。

今回知人は主にニッケルに強い反応が出た
と言う事ですので、
ニッケルを他よりも多く含む食材を
避けることになります。
参考までにリストを共有しますが、
なかなか厳しそうですよね。

【高ニッケル食品】
・穀類(ハト麦、小麦胚芽、米糠など)
・豆類
・菓子類(特にチョコレートなど)
・貝類
・種実類(いわゆるナッツ全般)
・藻類(ひじき、昆布、海苔など)
・野菜類(紫蘇、タケノコ、ワラビなど)
・キノコ類
・飲料(コーヒー、緑茶、紅茶、烏龍茶など)

コレだけだと
ミネラル豊富な物は軒並みアウトで、
食べられる物が無さそうに思えますが、
調べていくと
ニッケルアレルギーの人が食べられる
食材をまとめた英語資料も見つかりました。
当記事の最下部に翻訳したものを
共有しておきます。

上記リストと相反する気もしますが、
おそらく許容できる範囲の個人差で
大丈夫な物もあったりする、
と言う事なのでしょう。
だいぶ救われる気になりますね。

腸内環境改善食も意識すると
なかなか厳しそうですが、
根本的に症状を軽くする為には、
原因金属の接触を避けることと、
食事改善の併用しかありません。

知人も症状良くなったり悪化したり
繰り返しながらリストの中で
自分に合う物合わない物を見つけて
対応している様です。

腸内環境が良くなれば、
かなり出にくくなるし、
症状も軽くなるはずです。

汗をかく事が多くなる季節、
金属アレルギーの知識をもって、
金属製品を適切に使う様にしましょう。

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【参考:低ニッケル食品のリスト】
下記食材に該当しても缶詰製品は避けること。

【果物】
桃、梨、バナナ、ブルーベリー、
イチゴ、ブラックベリーはすべて
低ニッケルの果物です。
ラズベリー、パイナップル、イチジク、
ナツメヤシ、プルーンは避けてください。
リンゴ、トマト、オレンジ、
グレープフルーツ、その他の柑橘系の果物は
ニッケル含有量が少ないですが、
アレルギー症状を悪化させる
可能性があります。

【野菜】
ほとんどの野菜は食べられます。
推奨される野菜には、
ピーマン、キュウリ、ナス、
アブラナ科の野菜(キャベツ、カリフラワー、チンゲン菜)があります。
緑の葉野菜(ほうれん草、ケール、レタスなど)、
マメ科植物は避けて下さい。
もやし(緑豆)もニッケル含有量が高いです。
野菜は新鮮なものでも
冷凍や調理済みでもかまいません。

【乳製品】
ミルク、クリーム、チーズ、バター、
ヨーグルトなど、
すべてのプレーン乳製品は
ニッケル含有量は低いとされます。
チョコレートやラズベリー、柑橘類を
使った乳加工製品は避けましょう。

【穀類】
精製小麦とほとんどのトウモロコシ製品は、
ニッケル含有量は低いとされます。
パスタ、白米、コーンフレーク、
トウモロコシ粉、白パンも低ニッケル食品です。
ただし、全粒小麦粉と多粒粉は
ニッケル含有量が高くなっています。
小麦やオート麦のふすま、オートミール、
玄米、花の種(ヒマワリやゴマなど)は
避けましょう。

【植物性タンパク質】
種実(ナッツ)類、大豆は避けてください。

【肉、鶏肉、卵】
ほとんどの種類の動物性タンパク質は、
ニッケル含有量が低くなっています。
鶏肉、七面鳥、牛肉、卵をお勧めします。
エビ、カキなどの貝類、鮭は
ニッケルが多く含まれています。
缶詰肉やツナ缶などは食べないでください。

【飲料】
アルコール飲料、コーヒー、
お茶、炭酸飲料は
基本的に飲んでも問題ない事が多いですが、
金属ピッチャーや金属抽出機から
出てくる物は避けてください。
低ニッケルフルーツのジュースは
大丈夫ですが、
リンゴや柑橘類のジュースや
チョコレート飲料は避けてください。