【地中海食-2023-】


こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

健康や病気の予防を意識し始めると、目にしたことがあるだろう「地中海食」。

「地中海沿岸の国々の伝統的な食事スタイル」という事は名前から想像できます。その健康効果が注目を集めていますが、そもそも地中海食とはどんな食事で、何に効果が期待できるのか、と言うところを、2023年までの研究報告を参考にしてご紹介します。

【地中海食とは?】
地中海食(地中海式食事法)は、1950年代から、米国Minnesota大学のAncel Keys博士らにより行われた、食文化と虚血性心疾患などの発症率や死亡率などの国際共同研究に由来します。

この研究により、地中海沿岸諸国(クレタ島、ギリシャ、南イタリアなど)では米国や北欧に比べて成人病の発症率、死亡率が低いということが明らかになり、その食習慣を徹底的に調べあげた結果、当てはまるだろう条件とともに名付けられました。今となっては世界的に最も研究されている食事スタイルのひとつで、ユネスコの無形文化遺産としても知られています。

【地中海食の健康効果】
地中海食の健康効果としては、心血管疾患に対する健康効果がよく知られていますが、その後の研究で、「糖尿病」「メタボリックシンドローム」「肥満」についても、肯定的な報告が多数あります。

観察研究によれば、地中海食の励行が認知機能や記憶力の向上につながるとされ、最近のメタ解析では、地中海食の励行で認知症の発症リスクが21%低下したと報告されていますが、ランダム化比較試験でのエビデンスははっきりしません。

認知症対策用の食事法として、脂肪分やコレステロールの摂取を減らしミネラルをたくさん摂る高血圧予防食「DASH食」と地中海食を組み合わせた「MIND食」が、米国Rush大学医療センターにより提唱され世界中で実践されています。

ある観察研究では、地中海食によりがんのリスクが下がる可能性が示唆されましたが、ランダム化比較試験では結論が出ていません。

ガンについても、MIND食の様に、別の食事法と組み合わせる様な工夫で効果を発揮できる可能性がありますね。個人的にはケトン食と組み合わせて行うのが良い気がします。

【地中海食のやり方】
当たり前ですが、地中海沿岸地域の人達が口にする物なら何でもOK!と言う訳ではありません。元々は明確な定義があった訳でも無かったので、言葉を使う人によって、解釈や定義が違うことも珍しくありませんでした。

ザックリとした共通認識としては、「植物性食品を中心に、週に1-2日の適度な肉料理、オリーブオイルを主要な脂質とした食事」と言う感じの認識が一般的です。

現在では地中海食スコア(Mediterranean Diet Score, MDS)
という項目を何個満たすかで
評価することが一般的となっており、
国や地域によって柔軟に対応できる様に、
地域特有の食材などは規定されていません。

このスコアの項目も、
研究によって内容が違うこともありますが、
一例として
・野菜: 1日に2-3杯以上
・豆類: 週に2回以上
・果物/ナッツ: 1日に2-3個以上
・全粒穀物:1日に3-4杯以上
・脂肪:ω9不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸よりも多めに摂る(1日に25-40g)
・魚介類: 週に2回以上
・肉類: 週に1回以下
・乳製品: 1日に1-2杯程度(チーズやヨーグルト)
・アルコール: 適量(ワインの場合男性は1日に2杯以下、女性は1杯以下)
の様な感じです。

クリアできれば1、できなければ0。
で合計点数をつけて統計処理する訳です。

この項目にある食事の「杯serving」とは、
「1食分」「1回分」と言う意味で、
食材の目安量として米国で使われますが、
日本人には馴染みが薄い上に、
米国人ですらパッケージ表記の無い野菜などが
どれくらいの量が「杯serving」なのか、
をしっかり理解してない様ですので、
詳細な量よりも内容を理解して下さい。

改めてまとめてみると、

・野菜、果物かナッツ、全粒穀物を毎日しっかり。
・脂質はω9不飽和脂肪酸をメインに1日大さじ2-3杯
・乳製品は発酵食品を毎日1食程度。
・豆類、魚介類は週に2回以上。
・肉類は週に1回以下。
・アルコールは毎日適量。

と言う感じですね。

肉類を予想以上に食べないことに
驚かれる方も多いのではないでしょうか。

野菜や果物はジュースで置き換えず、
そのままかカットした物を食べましょう。
食物繊維も摂れますし、食べ過ぎを防げます。
加熱が必要な物じゃなければ、
サッと洗ってかじるだけでも良いです。

食べやすい大きさに切って、
氷水を張ったタッパーやジップロックに
入れて冷蔵庫に入れておけば、
いつでもパリッパリの野菜を楽しめます。

ナッツも植物性ミルクと言う形で摂るより、
無塩のローストした物を食べましょう。
体質的に合わない場合は無理しなくて大丈夫。

全粒穀物や根菜などで炭水化物をしっかり摂るかどうかは、
活動量によって判断しましょう。

伝統的に長寿の地域では、高齢者でも自分の足で坂や丘を上り下りし、畑仕事をしたりしています。それと同等の活動を日々してないなら、
1食で摂る全粒穀物の量を茶碗半分、パン1/2枚、などにした方が良いですね。

乳製品もゼラチンなどで固めただけの物は避け、ホンモノの発酵をさせた甘くない物を選びましょう。もちろん体質的に合わないならば、無理しなくて良いですよ。

アルコールも無理する必要はありません。毎日家族や友人と笑い語り合いながらワインを飲む、と言う地中海沿岸地域の風習が、その様に切り取られただけとも言えますので、楽しく飲めるなら1日ワイン1-2杯、くらいに考えて下さい。

また1日3食食べないといけない、と言うこともありません。現代人の多くは、食事、間食、清涼飲料水などを2-3時間おきに口にしているので、常に血糖値が上がりインスリンの効きも悪くなっていたりします。

最近では寝ている時間以外に、水以外食べない時間を作ることでインスリンの効きが良くなったり、胃腸を休めることで腸内環境や自律神経バランスが整ったりすると言うことも知られています。

毎日睡眠時間を含めて12-18時間食べない時間を作る、週に1-2回24時間食べない時間を作る、月に3-5日程度食べない期間を作る、と言うどのやり方でも、健康効果はほぼ同じです。

毎日行う場合は16時間以上出来ると、細胞内の使い古しの蛋白質などをリサイクルする、オートファジーと言う経路が活性化し、アンチエイジングや健康により良い効果があることも分かっています。興味のある方は、短い時間から取り入れて、16時間を目指してみるのも良いですね。

毎日決められた食べない時間を正確に守る必要もありませんので、生活や仕事の予定に合わせて柔軟に対応して大丈夫です。起きてすぐ食べない、時間が来てもお腹が空いてなければ1食抜く、という事でも良いと思います。

地中海食スコアの全項目をクリアする必要はたりません。まずは1項目だけ取り入れてみるのも良いと思います。いきなり野菜や果物を揃えるのが大変そうならば、地中海食の要素として、
・肉類を減らして魚介類中心にする
・穀類を全粒粉中心にする
・間食を無糖ナッツや炒り豆、新鮮な果物におきかえる
・ナチュラルチーズか無糖ヨーグルトを1日1回食べる様にする
これだけでも健康にはかなり良い効果があります。

誰にでもいつでも合う完全無欠な最適解なんて、この世の中に存在しません。むしろ今の自分にピッタリのやり方にいきなり出会う方が、異常なくらいです。

今回は「地中海食」を紹介しましたが、地中海食が、今のあなたに合わなくても、不思議ではありません。自分に合う習慣だけ続けながら、別の食事法を試してみて下さい。

そして食べた後の体調をより良くするために、食べる物や量などをアレンジしてみて下さい。それを繰り返していくうちに、あなただけの健康食のルールが出来てきます。

出来ることからひとつずつ取り入れて行って下さいね。

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