「メラトニン」は安全か?-睡眠について-

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

現代人に多い睡眠障害。
ドラッグストアでも、
睡眠の質を上げるサプリメントが、
多々販売される様になっています。

Yakult1000やメラトニンについて、
ご質問される機会があったので、
まとめてみました。

Yakult1000も睡眠を改善する可能性が
CMなどで強調されてますが、
乳酸菌飲料の多くは、
ほとんど糖液である製品が多いので、
習慣的に飲むと耐糖能障害や糖尿病を
引き起こすリスクが高くなりますし、
飲んだ後に血糖値が上がり、
その後血糖値が下がってくる時に眠たくなる、
と言う効果しか無いのでは?
と言う意見もあります。

Yakult社のホームページ上で
公開されている研究結果でも、
対照群には有効成分を含まない
外見や味は同じ擬似飲料を
同量飲んでもらったとのことですが、
糖質の量なども同じだったのであれば、
単なる血糖値変化とは言えない気もします。

糖液の含まれない粉末化した乳酸菌製剤、
として睡眠改善効果が確認されれば、
血糖値への影響を気にせずに使える、
と思いますので期待したいですね。

自然な睡眠リズムを作っている、
脳内で自然に存在するメラトニンは、
安全性が高く習慣性も無いとして、
国内外で睡眠障害対策に使われています。

メラトニン自体は、
アミノ酸の一種である
トリプトファンがセロトニンに変換され、
それが更に変換され合成されるホルモンです。

強い抗酸化作用、神経保護作用により
認知症の予防治療、がんの予防、
がんの進行抑制、眼圧降下作用、
概日リズム調整作用が確認されています。

特に抗酸化作用については、
メラトニン自体の抗酸化作用だけでなく、
MT1、MT2受容体に作用することで、
スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、
カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ
などの抗酸化酵素の発現が活性化し
増加することが注目されています。

強力な抗酸化作用による
癌抑制効果への期待も高く、
分子量が小さく脳血液関門(BBB)を通過し、
脳内に入ることができるため、
悪性脳腫瘍に対する治療効果や
神経保護作用が期待されており、
認知症や神経変性疾患に対する
治療効果への期待も高いです、

また国際宇宙ステーション実験棟「きぼう」
において破骨細胞の抑制作用が認められ、
閉経後の骨粗鬆症の進行と
認知症の進行を抑制するなど
アンチエイジング効果に期待が集まっています。

海外、特にアメリカでは
ドラッグストアでメラトニンを
簡便に買うことができます。

日本国内では厚生労働省が
「メラトベル」という商品名で
「小児の神経発達症に伴う入眠困難」
に対する治療薬として
メラトニン顆粒を承認し、
2020年6月から処方可能となりましたが、
一般大衆薬としても認めていないため、
国内ドラッグストアでは入手出来ません。
米国製メラトニン製品は数多く発売され、
多くの人が服用していますが、
含有量に数倍の差があったり、
不純物など品質管理の問題も
指摘されています。

米国薬局方協会USP(U.S.Pharmacopeial Covention)は
USP検証済マークの付いた
メラトニンの購入を勧めていますので、
気になる方はマークを確認してみて下さい。

メラトニンには素晴らしい効能がある、
と言うのも事実なんですが、
二次性徴抑制作用、
女性の場合は初潮を遅らせる作用が確認されており、
フランスでは13歳児以下の使用は
制限されています。
同様に処方薬とは言え承認薬メラトベルも
初潮年齢の女性には慎重処方が求められます。

また炎症促進作用、免疫活性作用なども
あるとされているため、
炎症性疾患、自己免疫疾患に罹患している人は
内服しないように注意が必要です。

そしてメラトニンには
性欲抑制作用も報告されています。
米国で市販されているメラトニンサプリメントは、
10mgやそれ以上の用量の物が多い様ですが、
パートナーがいる場合マナーとして
生理学的活性の範囲内(1-3mg程度)に
留めておくのが良いです。

メラトニンの使い方としては、
就寝60-90分前の内服が推奨されており、
自然な睡眠リズムを促すと言う意味では、
0.5-1.0mg程度の低容量利用が、
抗酸化作用や網膜メラトニン受容体活性化には、
3.0-5.0mg程度の中容量利用が、
強い抗酸化作用や神経保護作用には、
5.0-10.0mg程度の高容量が、
抗悪性腫瘍効果や抗認知症効果には、
30.0-100.0mg程度のメガドーズが、
良いとされています。

国内のクリニックにおいても、
認知症や進行がんの補助療法に
メラトニンを個人輸入し処方している、
ところもありますが、
上記でお示しした副作用もあるので、
多く飲めば良い物でもありませんし、
自然な分泌リズムを整える方が、
より良いかと思います。

大切なのが起きたら強めの光を浴びること。
日の出直後の明る過ぎない光が最高です。
それ以降の強すぎる光は、
直接見たり全身の肌で浴びる必要は無く、
木陰で手や顔に間接的な光を浴びるだけでも
効果はあります。

太陽光を十分浴びた日の夜はメラトニン分泌が増えます。
人工的な光でも良いのですが、
ブルーライトカットされてない光が良いです。
「ブルーライトカット」は昼間には不要です。

逆に日が沈んだ後の夜間には、
ブルーライトカットされた光を
なるべく弱くしておく事が大切ですが、
ブルーライトカットした強い光よりも、
ブルーライトカットしてない弱い光の方が、
睡眠への影響が少ないこともわかっています。
ブルーライトカットに拘り過ぎずに、
明るさを意識しましょう。

特に睡眠前1-2時間は照明を暗めにして、
スマホやTV等の画面を見ない様にすると、
睡眠の質を下げずに済みます。

そしてメラトニンを分泌するのに、
必須アミノ酸のトリプトファンが
必要になります。具体的には、
豆類、乳製品、ナッツ類、魚類、肉類、
アボカド、バナナなどから
摂取出来ます。

日中の食事で蛋白質を十分に摂取することと、
自然光を昼に浴び夜は強い光を避ける様にし、
快眠につなげましょう。

また健康のためには、
「○時間睡眠が必要」と言う情報もありますが、
多くの睡眠研究は研究者自身の生活リズムに
強く影響されている事が多く、
この○時間という数字に科学的な根拠は
あまり無いと考えた方が良いです。

22:00-02:00は成長ホルモン分泌に重要、
として「睡眠のゴールデンタイム」と言うのも、
実は誤りであることがわかっています。

中医学の陰陽五行説では午後11時からは
「胆嚢、肝臓、肺の解毒時間」で、
睡眠によって解毒が進むとされています。

この様な情報も合わせて信じられてきた
ゴールデンタイム説ですが、
どの様な睡眠サイクルにしても、
入眠後90分程度のノンレム睡眠時間こそが、
成長ホルモンを分泌させる重要なポイント
である事が分かってきました。

ですから不規則な勤務の職業だったり、
夜間に強い光を浴びざるを得ない人達は、
睡眠前60-90分前にメラトニンを
0.5-3mg程度服用しておくのも良い
とは思います。

繰り返しになりますが、
男女関わらず14歳以上であること、
体内に慢性炎症のある炎症性疾患や、
アレルギーなどの自己免疫性疾患が
無い事を確認して使う様にして下さいね。

もちろん自然に合わせた生活と言う意味では、
日没後時間をおかずに寝て、
朝日の昇る前に起きて活動を始める、
と言うのがより良いとは思いますし、
メラトニンの服用を半永久的に続ける、
と言うのもおかしいとは思います。

必要な睡眠時間は個人により異なりますし、
活動量、季節や年齢でも変わります。
長時間睡眠の人も訓練で短眠で良くなる、
と言う主張もあったりします。
自然に目が覚めた場合には問題ないですが、
極端に短い睡眠時間に無理にしている人は、
ちょっとした隙間時間に睡眠状態になり、
不足分を補う事も知られています。
致命的な事故に繋がる可能性もあるので、
やめた方が良いです。

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