基本的な感染対策並びに感染症について(2023年01月版)
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
今春4月頃にCOVID-19の感染症法上の扱いを
「2類相当」から「5類」へ変更する事を
検討し始める様に岸田総理が指示した、
と言う事がニュースになっています。
どうして3類や4類を飛ばして5類になっちゃうの?
と言う疑問もあるでしょうが、
3類と4類は、
動物を介して感染するとか、
飲食物を摂取すること等によって感染する
といった特殊性を持つカテゴリーなので
COVID-19は該当しません。
「5類になったらマスク不要」と言う
情報が強調されメディアが取り上げますが、
病原体としての特性が変わる訳ではなく、
感染経路や感染のしやすさなどは、
コロナウイルスである以上は
これまでと何も変わりません。
そして
「患者が入院できる医療機関が、
2類だと指定医療機関に限られているから
受け入れる病院が少ないので、
5類になれば医療ひっ迫が改善する」
と言うのも正しくない認識です。
日本の医療体制の根本的な問題として、
多数の小規模病院に少ない人的資源が
分散している事があり、
人手や病床設備が足りないと言う理由から、
COVID-19患者を受け入れない病院も
多かったりします。
その様な病院の中にも
受け入れ病院として手を挙げながら、
資源不足を理由に受け入れを拒否しつつ、
補助金を受けていると言う問題もありました。
これまでは手を挙げなければ良かったのが、
5類になれば建前上はどの医療機関も
診療拒否出来なくなるはずなのですが、
資源の分散と受入許容不足と言う構造的問題を
解決しない限りは分類変更で解決しませんし、
指定医療機関が本来の専門性の高い病気しか
受け入れなくなれば、
患者達を実質的に受け入れる病院が少なくなり、
むしろ問題は更に悪くなる可能性もあります。
ちなみに
一般の人達が行うべき基本的な感染対策もこれまでと何も変わりません。
【基本的な感染対策】
食事の前、トイレの利用後は
適切な手指衛生を励行しましょう。
水道水で15秒適切に擦り洗いするだけでも
感染症を起こさないレベルまで
病原体を減らせますので、
目に見える汚れが無い場合は
水道水洗いだけでも十分です。
界面活性剤で10秒揉み洗いし15秒濯げば、
更に減らす事が出来ます。
界面活性剤での揉み洗いを60秒にしたり、
「10秒洗い15秒濯ぎ」を2回行えば、
かなり減らせますし、
この後に擦過式アルコール除菌剤を
十分量しっかり擦り込めば
手術前の外科医と同じレベルの手洗いです。
いずれの場合にも、
洗った後に手指表面の水分を
すぐに拭いたり乾かす事も
微生物を増殖させない為に大切です。
ハンドドライヤーが問題視されたりしましたが、
手を洗わずちょっと濡らした後の
ハンドドライヤー使用などにより
汚染飛沫が拡散されるだけで、
不適切利用による問題かと思います。
手洗いが出来ない場合には、
おしぼりやウェットティッシュで
満遍なく手指表面を拭き取るのも有効です。
除菌成分が含まれてなくても2回行えば
手洗いと同等な感染予防効果があります。
それも出来ない場合に応急処置として
擦過式アルコール除菌剤を擦り込みますが、
その後にどこかに触れた時点で、
環境表面の微生物がついてくるので、
過信してはいけません。
手荒れや乾燥が気になる場合には、
起床後の手洗いの後に白色ワセリンを
薄く塗り込んでおくと良いですよ。
テーブルやメニュー表などの清拭についても、
保健所の監査が入る事業者の場合には、
次亜塩素酸やアルコール、柿渋などの
除菌成分を含むスプレーを噴霧して
拭くことも行われてますが、
水気をしっかり絞った布巾などで拭けば
家庭の感染予防処置としては十分です。
家族に感染者がいたり、
嘔吐物や下痢での汚染がある場合は、
中性洗剤などで有機物を含む
汚れを良く取ってから、
適切な濃度の次亜塩素酸液や
ウイルス不活化効果のある柿渋成分を
含む除菌剤などで消毒処置する事が望ましい、
という事はありますけどね。
発熱、咳、くしゃみなどが出る場合は、
なるべく外出しない様にしましょう。
アレルギー性でそうも言ってられないとか、
病院受診の為等必要な外出の場合には、
手指衛生とマスク装着をした上で、
屋内では他人と2m以上距離を取りましょう。
家庭内で自分が感染した場合も、
起きている間は可能な限り
マスク装着や手指衛生を励行し、
寝る場所は非感染家族と別にして、
他の家族へうつさない様にする、
という事が大切です。
感染症の症状が無い場合には、
2m隔離やマスクは不要ですが、
マスクの有無に関わらず、
眼、鼻、口の粘膜を汚染された手指で
不用意に触らない様に意識すると、
不用意な感染を軽減出来ます。
普段から口呼吸では無く鼻呼吸を
意識する様にすると、
自然なフィルタリングと加湿がされ、
喉の粘膜が乾燥しづらくなりますし、
末梢血管が拡張し血流が良くなります。
たまに深呼吸を意識して行うことも
健康の為に良いと思います。
以下に簡単に感染症全般の話を
改めてまとめてみましたので、
お時間とご興味ある方は
読んでみてくださいね。
感染症は
「人間に何らかの病気を引き起こす
微生物の感染に伴う病気」です。
寄生虫、細菌、真菌、ウイルスなどが
原因である事が多いですが、
プリオン等の特殊な蛋白質分子が
原因となる事もあります。
症状を起こす部位によって、
「皮膚感染症」「呼吸器感染症」「消化器感染症」
と言う様な分類をする事もあります。
病原体自体が増殖して悪さをする場合と、
増殖した病原体が出す毒素が
悪さをする場合があります。
そして感染症は、
「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」
と言う三種類の広がり方をする、
と言うのが感染症学における基本です。
「飛沫」は基本2m以上は拡散しない、
と言う事になっていました。
感染者の口や鼻から咳やクシャミと共に
放出される目に見える飛沫は
2mの距離を置けば防げるとされてましたし、
マスクでそれらの飛沫は
かなりの割合がブロックされますし、
漏れ出た空気も主に左右に拡散するので、
適切なマスク装着をする事で、
感染者から前方への飛沫拡散を軽減出来る、
と言う事も知られていました。
「空気感染」をする感染症としては、
結核、麻疹(はしか)、水痘(水疱瘡)など
極めて限られた病原体のみとされ、
正誤問題として国家試験にも出題されます。
ですから飛沫感染とされるコロナウイルスが
微小飛沫(エアロゾル)に含まれる形で、
長時間2m以上の距離を浮遊し拡散して、
空気感染に準じた広がり方をする、
と言う事を認められない専門家も
多かったようですね。
人がどの様に人為的に線引きをしたとしても、
飛沫感染を起こす呼吸器感染症の多くが、
エアロゾルに含まれる際に
どれだけの感染力が残っているかは別にして、
コロナウイルスと同じ様な伝播を
それなりにしているのだと思います。
医療従事者が装着するサージカルマスクの意義は、
患者さんの体液飛沫が飛んで来た際に、
医療従事者の鼻や口の粘膜に接触して
何らかの感染症に接触感染しない様に
すると言う目的が大きいです。
だからこそ表の撥水加工が重要なんです。
普段から眼鏡をかけていたり、
アイシールドやゴーグルを併用しないと
眼の粘膜は保護出来てませんので、
不完全な事も多いんですけどね。
衛生環境下での作業員達がするマスクは、
検体や製品の上に体液飛沫や毛髪、垢などが
付着し汚染しない様にする事が目的です。
エアロゾルレベルの飛沫を濾過する
どんな素晴らしいフィルターでも
隙間があればその効果は著しく減りますので、
「エアロゾル感染を防ぐ」のは限界がありますし、
コロナ以前は
「マスクに感染予防効果を示す報告は無い」
「マスクに感染予防効果は無いという報告はある」
と言うのが当たり前でした。
もちろんマスク着用に
「一定の抑止効果が期待出来る」
と言う事は否定できませんが、
「鼻や喉の乾燥を和らげる」
「鼻や口の粘膜を指で触れる機会を減らす」
と言う事によるもので、
「汚染エアロゾルの吸引量を減らす」
と言うのは理論上の話に過ぎず、
実際に感染や発症をどれだけ防げるかは
誰にも分かりません。
コロナで話題になったN95マスクは、
そもそも感染予防具では無く、
静電気を帯びさせる加工で
微粒子の粉塵の吸入を防ぐ為の物で、
装着して早くて20秒、
適切に利用しても長くて6 時間しか
静電効果を保つことが
出来ない事が分かっています。
静電効果が失われた後は
サージカルマスク同等の効果しか得られないことも、
留意しておく必要があります。
より細かい繊維を用いて、
静電気では無く分子間力を利用して
N95マスクと同程度に微粒子を捕集出来る
と自称するマスクも開発販売されています。
フィルターとしての実験性能は
メーカーにより確認されており、
製品紹介にも提示されていますが、
N95同等の機能を担保する、
厚労省国家検定規格DS2、
米国NIOSH規格N95、
ヨーロッパEN規格FFP2、
などの認証はまだ受けてない様です。
日本においても感染対策用の
一般向け、医療用のマスクの
JIS T9001が作られており、
認証マスクも徐々に増えつつあり、
N95やDS2相当の
JIS T9002規格も整備中です。
今後は感染者自身や
感染者と密接に触れ合う人しか
必要では無くなりますが、
撥水性能やフィルター性能が
規格として保証された
マスクを選ぶ際には、
「JIS認証」を参考にするのも
良いと思います。
災害対策用に備蓄する場合には、
呼吸が苦しくはなりますが、
微粒の粉塵を吸い込まない意味で、
自分の顔にフィットする事を確認した、
N95、FFP2、DS2等の認証を受けた
マスクの方が望ましいです。
そもそも感染症法上の分類は、
「感染力(人から人への伝わりやすさ)」
「重篤性(発症した際の症状の重さ)」
「医療や社会経済への影響」
などを指標として判断されています。
新型コロナ(COVID-19 )は、
発生当初は性質等が不明だった為に
「指定感染症」とされていましたが、
2021年の感染症法改正で
「新型インフルエンザ等感染症」
とされています。
感染拡大防止対策については、
随時その必要性や内容が見直されており、
陽性者全例隔離入院させることも無くなり、
オミクロン株が主流となってからは、
濃厚接触者の範囲が家族や施設内に限定され、
空港での水際対策もかなり緩和され、
医療機関による陽性者の全数届出も
行われなくなりました。
このように対策は実状に合わせて、
「5類相当」と言えるところまで変化しており、
行政による「入院隔離」や「外出自粛要請」
などの意義が低下しているのであれば、
「新型インフルエンザ等感染症」から
外すことが妥当ですし、
「重篤性」の観点から見ると、
重症化率や致死率は低下してきており、
他の感染症の致死率と比較しても、
既に「5類相当」であるとも言えます。
死者数が増えている様に見えるのは
把握されていない人も含めた全感染者が
増えていることを反映していると
考えるのが自然かと思います。
ただ現在流行してるオミクロン株やその亜型は、
感染力が非常に強いですし、
広く一般に使用できる治療薬が無い、
一部で長引く後遺症がある
事なども無視できず注意が必要です。
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