【夏野菜の代表、トマトやナスなどに毒がある!?】
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
猛暑が続いたり台風が発生したりと夏真っ盛りですね。夏野菜としてこの時期に良く食べられている「トマト」や「ナス」。コレらに毒があるから気をつけた方が良い、と言う情報を目にされて不安になった、と言う方がいらっしゃいました。
果たして本当なんでしょうか?
まとめた情報をblogに書いてみました。
【ナス、ナス科植物について】
ナスは、熱帯から温帯にかけて栽培され、ナス科に分類される低木です。日本では冬になると枯れてしまいますが、基本的には多年生植物です。ナスは連作障害を起こしやすい野菜と言われており、何も処置しない場合は5-7年以上間を空けないと障害がおきやすいと言われています。
ナス科は非常に多くの種類があります。
・ナス、トマト、ジャガイモ等が属するナス属」
・トウガラシやピーマンが属するトウガラシ属
・タバコなどが属するタバコ属
・ホオズキなどが属するホオズキ属
などがあります。
上記のナス科植物には、有毒なアルカロイド配糖体(ソラニンなど)が含まれています。食用として品種改良されている栽培品種の場合、完熟した実のアルカロイド含有量は比較的少なく、トン単位の様な極端なレベルで無ければ、健康被害や致死量を超える恐れは少ないです。
しかし未熟な実や非可食部(茎、葉など)はアルカロイド含有量が比較的高いため、未熟な実や非可食部は食べない方がよいです。ピーマン、青唐辛子などの様に、青い実が商品として売られている場合は別です。またソラニンは水溶性のため、流水などに晒すと水に溶けだしますが、熱には安定で、加熱調理しても毒性は消えません。
【トマトについて】
トマトもナス科植物ですので、基本的には同じと思ってもらって大丈夫です。
トマトは南アメリカのアンデス山脈原産の多年生植物で、緑黄色野菜の一種です。赤い色の成分であるリコピンが、抗酸化作用のある栄養成分として注目されています。
ちなみにナスの紫色は、アントシアニン色素による色で、ナス特有の「ナスニン」と呼ばれる成分が主成分です。
16世紀にヨーロッパに持ち込まれたトマトは、当初「毒りんご」と呼ばれていました。トマト自体の毒性と言うよりは、貴族たちが使用していた食器に含まれる鉛が、トマトの酸で溶出して鉛中毒になったため、と言うことの様です。
そのために長らく観賞用とされましたが、18世紀になってようやく食用としてヨーロッパに広がり始め、現在では生のままや焼いて食べたり、ケチャップやソースなどに加工されています。
トマトには、アルカロイド配糖体のひとつであるトマチンが含まれていますが、食用栽培品種の完熟トマトは、トマチン含有量がごく微量であるため、人間への健康被害は無視できる程度であることが分かっています。
ただし、他のナス科植物と同様に、未熟な緑色の果実や非可食部(茎や葉など)、野生種のトマトにはかなりの量のトマチンが含まれます。
トマチンを一度に大量に摂食すると、腹痛や下痢などを引き起こすことがあります。トマチンを多く含む実を食べた時には、特有の刺激感もある様ですので、家庭菜園などで栽培している未熟なトマトを食べようとする時は、刺激感がある場合は無理に食べない様にしましょう。そして食べる機会はほとんど無いと思いますが、野生のナス科の植物は、基本的には食べないのが無難です。
【「レクチン」が皮や種に含まれる?】
以上が現代科学で判明している、ナス科植物における毒性成分の情報ですが、健康意識の高い人の間で話題の「レクチンフリーダイエット」と言う食事法では、植物毒として「レクチン」と言う数千種類もある毒性物質が、病気や肥満の根本原因だ、と言う仮説を主張しています。
4億年前に、植物は昆虫や動物などの捕食者から身を守り、子孫を残すために「レクチン」という毒性蛋白質を作る様になった為、一般的に健康に良いとされる食品、例えば大豆やトマト、穀類、ナッツなどには「レクチン」がたくさん含まれているので、日常的に食べることで私たちの腸を傷つけ、様々な病気や肥満を引き起こす、と言う理論です。
植物を食べる動物や、草食動物を食べる肉食動物なども「レクチン」に汚染されやすいと言われており、何を食べて育った動物の卵や肉なのか、が大切だとされます。
何を試してもダメだった患者さんに対して、この理論を元に「レクチン」が含まれる可能性のある食材を1ヶ月程度完全に食べない様にすると、何をしても良くならなかった症状が改善したと言う経験から、この食事法が作られた様です。
そして「レクチン」への耐性は個人差がかなりあることから、症状が良くなった後にひとつずつ再開してみて、特に問題なければ食べても良いが、体調の悪い時は避ける様にする、と言うことが勧められています。
この理論の中ではナス科植物も対象であり、特に皮と種に「レクチン」が多く含まれると言うことで、食べる際には皮剥きと種取りをすることを勧めていますが、科学的には皮に含まれる色素成分に強い抗酸化作用があり健康効果がある、とも言われていますので、混乱される方も多いかと思います。
特にこのレクチンフリーダイエットをしなくても体調が良いのであれば気にしなくても良いと思います。気になる方は皮剥きや種取りをして食べる様にするか、イタリアなどでトマトを保存する際には、皮を湯むきし種取りをしますので、その様な処理をされた物を使うと良いですね。食べたら体調が悪いと言う方は、無理にナス科の野菜は食べない方が良いでしょう。
ちなみにこの理論で言う「レクチン」は、ソラニンやトマニンなどのアルカロイド配糖体に限らず、含まれている成分の中でヒトに有害な影響がある成分全てを含めた言い方です。
この理論で言われる「レクチン」はかなり幅広い植物由来の毒性物質の総称ですが、一般的に科学分野で使われるレクチンとは、ウイルス、細菌、植物からヒトにまで広く存在する「糖鎖結合性タンパク質」の総称で、1万種以上が知られています。あらゆる生物に含まれるとも言えますね。糖鎖とは、ヒトの血液型物質やウイルスの感染標的などに働く鎖状の分子で、細胞間の情報伝達などに重要です。
「レクチンフリーダイエット」における「レクチン」は、既存の用語を意味を置き換えて使っているので、違和感を感じます。
とは言え個人的には、健康に影響を与える可能性が少しでもある物を一時的に全て取り除くことで、難治性の症状を改善させると言うことは、意味があると思いますので、難治性の症状でお悩みの方がこの食事法を試してみるのは悪くないと思います。
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