偽痛風ってなに?
こんにちは、Dr.Kです!
数回前の記事にて「尿酸」について
お話しをさせて頂きました。
その際に高尿酸血症に伴う
「痛風」について書かせて
頂いたのですが、
「偽痛風」に関する質問も
いくつか頂きました。
「偽痛風」ってなに?
実は「偽痛風」と言うのは、
「痛風の様な関節炎を起こすが
高尿酸血症を伴わず、
関節液内に尿酸の針状血症も認めない」
と言う除外診断名であり、
固有の病気の名前ではありません。
ですから、偽痛風と言われた場合、
「尿酸が原因じゃない関節炎」
と言うことを言われただけなのです。
この偽痛風の原因としては、
関節内にピロリン酸カルシウムの結晶が
関節液内に析出している割合が多い
とも言われています。
しかし高尿酸血症に伴う痛風発作とは異なり、
ピロリン酸カルシウムの血中濃度が
正常であっても、析出が起きている
ケースが多いことも報告されており、
原因や治療法は不明と言うのが
現代の医療の通説となっています。
痛風の様に母趾の付け根の関節に多い
などの傾向はなく、
全身どこにでも結晶が沈着する可能性
があります。
肩、肘、手首、手指、股関節、膝、足関節、足指
全てに起こりうるのです。
まれですが、首の関節にも結晶析出と炎症が起き、
首が回らなくなると言う症状を来すと言う報告も
されています。
また、痛風は男性に多い傾向があり、
食事や遺伝などが関与していると言われていますが、
偽痛風の場合にはやや女性に多い傾向があり、
加えてなにか原因となる生活習慣なども
知られていないのが現状です。
ですから、関節液穿刺による顕微鏡検査で、
平行四辺形の様なピロリン酸カルシウム結晶を
確認することで診断はされますが、
治療は痛み止めと経過観察しかありません。
ピロリン酸カルシウムとは何?
そもそも「ピロリン酸」とは、
リン酸分子が2つ結合したもので、
動物植物に関わらず生命活動の副産物
として生成されます。
ちなみに生命のエネルギー通貨
とも言われるATPも
アデノシン三リン酸と言う正式名称の通り、
リン酸化合物の一種です。
ですから実は
ピロリン酸も分解すれば
エネルギーを取り出せるはず
ではあるのですが、
ピロリン酸は毒性があり、
蓄えておくよりも
早急に分解するのが望ましい物質です。
ちなみに植物では、
発芽した種子の中で
活発な生命活動に伴いピロリン酸が蓄積、
それを分解する酵素の働きにより、
液胞内酸性化などを引き起こし、
植物版成長ホルモンのオーキシンを
組織内に正確に輸送するとされています。
しかし、東京大学の研究チームが
実はこの植物の発芽後の成長過程で、
これまで言われてきた「液胞内酸性化」
よりも「ピロリン酸分解除去」の方が
より重要な働きであることを報告しています。
また、無機ピロリン酸は人体内で
組織非特異的アルカリフォスファターゼ(ALP)
の働きによりリン酸を作り出し、
それがカルシウムと結合し
ハイドロキシアパタイトと言う結晶を
形成することも知られています。
遺伝子変異によってALP機能が低下し、
このハイドロキシアパタイト形成がうまく出来ず、
骨の石灰化が紹介される低フォスファターゼ症
と言う病気もあります。
10万人に1人と言われる稀な病気です。
この病気では、酵素の機能障害で
分解されなかったピロリン酸が
骨の石灰化を抑制すると言う説もあります。
ピロリン酸カルシウム沈着症の現状
しかし様々な
リン酸カルシウム結晶の関節、軟骨への沈着
と言う所見がある人達のなかでも、
・症状が無い群(無症候性)
・大きな関節に急性関節炎を起こす群(偽痛風発作群)
・変形性関節症(OA OsteoArthrits)様の慢性関節炎を起こす群
・関節リウマチ(RA Rheumatoid Arthritis)様の関節破壊を起こす群
など多彩な病態があり、
まだまだ原因や治療については
研究が進んでない
のが現状です。
一部の患者においては、
外傷や手術の後に
ピロリン酸カルシウム結晶沈着を伴う
偽痛風発作を来したりすることから、
外傷や手術の影響で起こる
可能性も指摘されています。
生命活動の際に生成されてしまう有害廃棄物
と言う認識しか無いピロリン酸ですが、
研究が進むと尿酸の様に実はなんらかの
大きな役割が分かってくる可能性もあります。
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